Civ5に関係のある部分の抜粋ですので前後のつながりが悪いところがあります。微妙なニュアンスなどは原文を参照してください。
Revisiting the Design of ‘Civ 5’
経済について
僕はCiv5でCivシリーズの伝統的な経済システムに幾つか修正を加えた。そしてそれは資源システム同様、ごたまぜだった。全土共通の幸福システムで僕がしたかったことは、小さな帝国が大国と競うのを可能にすることだ。
問題は、幸福が小さいままでいさせる強い動因として働き、それに従わない場合のペナルティが厳しすぎたことだった。Civシリーズの特徴であり多くのプレイヤーにとって重要な戦略として採用されてきた巨大帝国を作ることは実質的に不可能だった。
僕はまだ小帝国が生き残れるようにする方法があると思っているが、拡張政策を楽しむ人の負担になるようではいけない。ペナルティは克服可能な挑戦でなければならなず、イライラする越えられない壁であってはいけない。
研究/商業/文化スライダーを廃したこともポジティブな面とネガティブな面があった。僕はストラテジーゲームでスライダーをいじるのはつまらない時間の無駄だとつねづね思っていた。その意味では無くしても問題なかったと思う。でもスライダーにもやっぱり、のちのちまで気づかなかった隠れた価値があった。それによってプレイヤーはいつでも国の方針を変えることができるようになる。
不幸なことにスライダーを取り払ってしまうとプレイヤーは過去に行った経済的な選択にずっと縛られ続けることになる。例えば、軍のアップグレードのために研究を後回しにしたくても、そうする方法がない。長期的な計画に報いるのは重要なことだが、臨機応変に方針を変えるためのツールをプレイヤーに残す必要がある。
政治について
Civ5のポリシーシステムとCiv4のシヴィクスシステムはどちらも僕のお気に入りだ。どちらもプレイヤーの帝国の「個性」を明確にするという同じコンセプトを違った方向から捉えている。
ポリシーシステムで僕はプレイヤーに、帝国のアイデンティティがゆっくりと形成されるさまを感じて欲しかった。日本とドイツは第二次大戦のあと劇的に変わった。それでも彼らは日本人とドイツ人でありつづけ、名誉や勤勉さという遺産を保ち続けている。
対照的に、シヴィクスシステムは帝国を即座に完全に変革することができる。もちろんそのためのコストはかかるが、心からの平和主義者を地獄の底からやってきた戦争屋に変えることが可能だ。それは不自然だけど、ゲームプレイ上は大きな利点がある。どちらのシステムにも長所と短所がある。でも僕は今、シヴィクスの急な方針転換を可能にするシステムほうが優れていると思う。
戦闘について
Civ5で行ったもっとも重要な変更は戦闘システムだった。Civシリーズで採用され続けてきた巨大なスタック同士の激突に代えて、1UPT(1タイルに1部隊)システムを導入した。これでプレイヤーは一箇所にすべての部隊を積み重ねるのではなく、土地に広々と軍を展開しなければならなくなった。これはウォーゲームの古典、パンツァージェネラルの影響を大きく受けている。全体的に言って、このシステムは他のシリーズよりはCiv5にうまく合っていると思う。でもやっぱりこのシステムにも考慮すべきマイナス面がある。
1UPTシステムを採用して明らかになった最大の困難は優れた戦術AIを書くことだった。僕はそのサブAIを書いた人間じゃないけど、それにこれを任されたチームの担当者は僕が与えたレモンからうまくレモネードを作るという優れた仕事をやってのけたけど。言うまでもなく、戦術的に非常に限定された空間で多数のユニットをうまく動かすAIをプログラムすることは信じられないほど難しい。パンツァージェネラルでそれが問題にならなかった理由は、そのAIは実質的に何もする必要がなかったからだ。パンツァージェネラルのAIは常に防衛的で、敵の要塞を攻略するうまい方法をパズルとして解くのがゲームの大部分だったから。
敵がたった一つのタンクに命令を下すだけでトラブルまみれになるには十分だった。パンツァージェネラルを面白くしていたのは、プレイヤーがヨーロッパ中で電撃戦を繰り広げて、その力の前に敵があっという間に劇的に屈服するからだ。
一方、CivシリーズではAIは全面戦争を始める能力がなければならない。時には別の大陸においてさえ。全く異なるスケールの難しさの話だよ。スケールについて言うと、1UPTシステムの別の重大な問題はマップがそれにうまく合っていなかった。
パンツァージェネラルの楽しみは、うまく軍を動かして哀れな敵を密かに包囲することにあった。Civ5では運悪く、障害となる狭隘な地形は珍しくなくて、これが1UPTの本来の価値をだいぶ損ねた。つまるところ、それを楽しいものにするための十分な空間がなかった。
現実には、1UPTによっておきたユニットの渋滞はゲームの他の部分にも影響を及ぼした。以前のCivシリーズでは10、50、あるいは1000ユニットでさえ保有しても問題はおきなかった。確かに多数のユニットは管理の手間が増えるが、ホットキーとUIによって問題をかなり改善することができた。
しかしCiv5ではすべてのユニットは自分自身のためのタイルを必要としてていて、ということはマップは急速に埋まっていくということだ。この問題のために僕は生産速度を遅くした。バケツがいっぱいになるまでの時間を伸ばすために。ペース上の理由から、初期のゲームではプレイヤーに4ターンごとにユニットを生産させようとしていた。けどそうすると古典時代の終わりまでにマップは戦士でうめつくされてしまうので無理なことに気づいた。マップが多数のユニットで満たされてしまうと戦争も面白くなくなってしまう。
じゃあ1UPTシステムをCivにうまくなじませる方法はあるだろうか。たぶん。鍵はマップだ。ユニットを自由に駐屯させておき、互いに邪魔にならないように動かせる十分な空き地があるだろうか?あるならうまくいくだろう。それを可能にするために、最大マップサイズを少なくとも4倍にしなければならないと思う。もちろん世界をそんなに大きくすれば全く別の困難がやってくるだろうけどね!
実際にはそれができなかった技術的な問題があった。すでに僕らのエンジンは最新ハードの性能に対して全力で突進していて、そういう細々とした多数の物体をスクリーンに映しだすのはコストがかかりすぎた。本当にだよ。
あとがきは残ったCiv5チームへの称賛などなので省略。